にんべん株式会社13代社長に聞いた!今と未来を生き抜く経営

老舗企業は、その長い歴史の中で、それぞれの時代変化に併せて様々な新しい取り組みを行っています。 一方で、昨今は3年一昔と言われるほど変化のスピードが早くなっており、時代についていけなくなる企業が後を絶ちません。 今回は、「後継者」と「変革」に焦点を当て、具体的にどういった取り組みを行っているのかについて、創業320年の鰹節の名店として有名な「株式会社にんべん」(以下にんべん)の13代社長、髙津克幸様にお話し頂きました。  

後継者

昨今大きな問題の1つとして取り上げられているのが後継者問題で、地域住民から惜しまれながらも廃業に至るケースが少なくありません。 東京商工リサーチによると、2017年度に廃業した企業の80%以上が60代以上の経営者でした。 後継者を見つけるという観点では、一般的に2通りの手段があります。 1つめは自分の子供や親戚など、所謂ファミリー。もう1つは外部の人材を迎え入れることです。 にんべんでも基本的には親族で経営していましたが、養子を後継者として迎え入れるケースもありました。 迎え入れたのは4代目、6代目、8代目、9代目で、それ以降は直系の方が継がれています。 外部の継ぎ手となると、家業に対するコミットメントに不安を覚えるかもしれません。 しかし驚くことに、長く続く歴史の中で起きた革新の多くは、養子の後継者の功績だったようです。 要所要所で外部の優秀な人材を登用することが、組織に刺激を与え得る一つの要因にもなります。親族内で継ぎ手がいない場合も、外部の人材を登用することで次の時代につながっていきます。  

後継者育成

もし自分の子供に継がせようと思った場合、次の世代を育てるために、どんなことを意識して教育されているのでしょうか。 まずは髙津社長の実体験をご紹介します。
  • 幼少期より産地巡りなどに連れて行かれたり、ほぼ毎日のように自宅に取引先のお客さんがいらっしゃっていた。
  • 高校の時に両親から進路をどうするかと迫られ、特にやりたいこともなかったのでそのまま継ぐことを決心。
  • 大学の頃は長期休暇の際、協力工場などで修行を行った。
一連の中で、強制されたことは一度もなかったとのことでした。 強制されなくとも、小さい頃から日常的に家業が近くにあると子供は意識します。 無理に育成として何かやることはなく、そっと見守った結果自分の意志で継ぐことが重要です。  

変革の事例

老舗企業の経営についてよく「イノベーションの連続」言われていますが、にんべんも同様でした。 「現金掛け値なし」という販売形態は、江戸時代に越後屋が取り入れたことで有名ですが、にんべんも直ぐにそれを取り入れました。 それまでは掛売りにして、あるタイミングでまとめて決済していたため、信用のある顧客にしか販売していませんでした。 しかし、この手法を取り入れたことによって江戸中の誰もが鰹節を購入できることになり、引いては江戸の鰹節文化を形成させる一助となったのです。 その他にも
  • 「商品券」の発行
  • より保存性がよく味の洗練された「本枯節」をいち早く販売
  • 鮮度を保てるよう、削り節を窒素で満たしたパックに詰めて販売
など、時代に合わせて様々な革新を起こしてきました。 ただ、イノベーションとはあくまで結果論であって、起こそうと思って起こせるものではありません。 イノベーションが起こりうる組織作り・経営体質・理念などが土台にあり、様々な事にチャレンジする中で、後に「あれはイノベーションであった」と呼べる施策が打てるのです。  

変革に対する考え方

老舗企業がベンチャー企業と異なるのは、既に根幹や関わる人達との関係が出来ているということです。 これまでに培ってきた「伝統」、現在関わりのある人の「日常」。これらを維持することが先決です。 にんべんにとっての伝統、日常とはどんなものでしょうか。 伝統:鰹節は古代より日本人に親しまれ、伝統が培われてきた食文化です。 にんべんにとって、その伝統は頑固として守らないといけないという使命があり、職人気質ともいえる部分です。 日常:そして、今現在取引している協力会社や顧客(消費者)に対する、日常レベルの取り組みが必要です。商品としては勿論、企業としても安心・安全の保証をする必要があります。 またその上で、身近にある存在として顧客に感じて貰う必要があります。 革新:上記2つの土台があって、ようやく新しいことにチャレンジすることが出来ます。鰹節は和のものですが、最近では洋食や中華に合わせた使い方も提案したり、より文化を広げていくことに挑戦されています。 このように、「とにかく新しいことをする」わけではなく、これまで培ったもの・現在あるものを根幹とした上で、新しいことに挑戦しなければなりません。  

まとめ

後継者の項では、特別「育成」と呼ぶべき手法はありません。ただ、幼少期より家業が身近にあることで、自然と子供は承継を意識するようになります。 また親族に事業承継するだけでなく、養子として後継者を迎え入れることで組織に新たな風を取り入れることになります。 従って、もし現状親族に継ぎ手がいない場合には、思い切って外部から引き入れるのも一つの手段として視野にいれるべきでしょう。 また変革の項では、伝統と日常を維持した上で、時代の流れに合わせて新しいことに挑戦していくことが重要ということが分かりました。 職人気質な部分、日常の管理、変革の意識。これらが上手く混ざりあうことが、老舗企業として生き残る重要な要素となるのです。